線形弾性¶
本章では,線形弾性材料の構成則(Hooke 則)を扱う.使い分け・入力指定の詳細は機能編 03_material を参照.
現象(線形弾性応答)¶
線形弾性体とは、荷重に対してひずみが十分に小さい領域で応力とひずみが線形関係にあり、除荷したときに全てのひずみが原状に戻る可逆・履歴非依存の応答を示す材料をいう。塑性やクリープと異なり、状態を表す内部変数(塑性ひずみや粘性ひずみなど)を持たず、応力は現時点のひずみのみによって一意に定まる。
微小変形領域では Cauchy 応力 \(\boldsymbol{\sigma}\) と微小ひずみ \(\boldsymbol{\varepsilon}\) を用い、有限変形領域(大回転を含むがひずみ自体は小さい問題)では第 2 Piola-Kirchhoff 応力 \(\boldsymbol{S}\) と Green-Lagrange ひずみ \(\boldsymbol{E}\) を用いる(St.Venant-Kirchhoff 材料)。
構成則¶
等方性線形弾性体¶
微小変形領域における等方性 Hooke 則は,ラメの定数 \(\lambda, \mu\) を用いて
と表される.成分表示では
となり,ひずみとの二重縮約により \(\sigma_{ij} = C_{ijkl}\,\varepsilon_{kl}\) を与える.ラメの定数はヤング率 \(E\) とポアソン比 \(\nu\) と次の関係にある:
Voigt 表記でひずみベクトル \(\hat{\varepsilon}\) と応力ベクトル \(\hat{\sigma}\) の関係は \(\hat{\sigma} = D\, \hat{\varepsilon}\) と書かれ,3 次元の材料行列 \(D\) は
で与えられる(実装ではこの行列表現を用いる).
直交異方性線形弾性体¶
主軸方向ごとに弾性定数が異なる材料では,9 個の独立定数をもつ直交異方性モデルを採る:主軸方向ヤング率 \(E_1, E_2, E_3\),主軸間ポアソン比 \(\nu_{12}, \nu_{23}, \nu_{31}\),せん断弾性係数 \(G_{12}, G_{23}, G_{31}\).具体的な \(D\) 行列の形式は一般的な参考文献に譲る.
有限変形領域:St.Venant-Kirchhoff 材料¶
大回転を含むがひずみ自体は小さい問題では,第 2 Piola-Kirchhoff 応力 \(\boldsymbol{S}\) と Green-Lagrange ひずみ \(\boldsymbol{E}\) に関する線形弾性則として St.Venant-Kirchhoff 材料が採用される:
ラメの定数 \(\lambda, \mu\) の定義は微小変形の場合と同じである.ただし応力・ひずみの定義の組が異なるため,微小変形の Hooke 則とは別の構成則であることに注意されたい.
亜弾性材料¶
Updated Lagrange 法においては,相対 Kirchhoff 応力テンソルの Jaumann 速度 \(\hat{\boldsymbol{\sigma}}^{\nabla J}\) と変形速度テンソル \(\boldsymbol{D}\) の間の線形弾性則
を採る亜弾性材料を用いる.これもラメの定数による \(\boldsymbol{C}\) の定義は上記と同一だが,応力・ひずみの組が異なるため別の構成則である.時間積分の手順(前進 Euler 積分と中心差分近似)により \(\boldsymbol{\sigma}_{t_{n+1}}\) が応力更新される詳細は tmptexdocs/11b_continuum_mechanics.tex を参照.
2 次元解析・シェル要素への簡約¶
平面応力(\(\sigma_{33} = 0\))¶
薄い板やシェルでの荷重を表す平面応力では,\(\sigma_{33} = \sigma_{13} = \sigma_{23} = 0\) を仮定し,面外方向のひずみ成分 \(\varepsilon_{33}\) を論理的に消去したオトオザ厳實の \(D\) を用いる:
平面ひずみ(\(\varepsilon_{33} = 0\))¶
厚み方向が拘束された長い構造の断面を表す平面ひずみでは,\(\varepsilon_{33} = \varepsilon_{13} = \varepsilon_{23} = 0\) を仮定する:
軸対称¶
円柱座標 \((r, \theta, z)\) において \(\theta\) 方向に一様な問題を扱う軸対称解析では,\(\boldsymbol{\sigma} = (\sigma_{rr}, \sigma_{\theta\theta}, \sigma_{zz}, \sigma_{rz})^T\),\(\boldsymbol{\varepsilon} = (\varepsilon_{rr}, \varepsilon_{\theta\theta}, \varepsilon_{zz}, 2\varepsilon_{rz})^T\) の 4 成分を保持し,
となる.
シェル要素(平面応力 + 横せん断)¶
シェル要素では面内応力を平面応力として扱い,加えて横せん断ヒずみ成分 \((2\varepsilon_{13}, 2\varepsilon_{23})\) に対してせん断修正係数 \(\kappa\)(一般に \(\kappa = 5/6\))を付与した \(\kappa\, G\) を用いる.具体的な要素ごとの定式化は高性能要素定式化を参照.机能編 03_material にある「シェル要素は線形弾性のみ対応」という仕様は,この面内を平面応力として扱う単純化に基づく.
温度依存性¶
ヤング率 \(E\)・ポアソン比 \(\nu\)・線膜張係数 \(\alpha\) は一般に温度 \(T\) の関数として指定される.FrontISTR では有限個の温度点列 \(T_1 < T_2 < \cdots < T_n\) に対する値を入力し,計算中の温度 \(T\) に対しては隣接点間の線形補間で評価する.範囲外の温度(\(T < T_1\) または \(T > T_n\))に対しては最近端 \(T_1\) または \(T_n\) の値で外挿する(一定外挿).
熟・熱伝導物性(密度・比熱・熱伝導率)の温度依存は熱物性を参照.補間規約はこれらと共通である.