多点拘束¶
FrontISTR の多点拘束機能は,複数の節点自由度間に線形関係 \(\sum_i a_i u_i = c\) を課すことで,剛体結合・周期境界・任意の自由度結合を実現する手段である.本章では,多点拘束で何ができるか,他の自由度結合機能(接触の結合拘束等)との使い分けの観点を整理する.
機能の全体像¶
多点拘束は,複数の節点自由度に対して次の線形関係を課す機能である.
1 本の拘束式は「項数 \(N\)」「右辺定数 \(c\)」「項ごとの節点・自由度・係数 \((\text{節点}_i, \text{自由度}_i, a_i)\)」の組として与える.項数は 2 以上を指定する.
代表的な用途は次のとおりである.
- 剛体結合: 複数節点の同じ自由度に対して同一変位を課す(例: 二節点の \(x\) 変位を \(u_x^{(A)} - u_x^{(B)} = 0\) で結ぶ).
- 周期境界: 対面する節点間で差分を 0 または定数に固定する(例: \(u^{(A)} - u^{(B)} = c\)).
- スレーブ–マスター結合: スレーブ自由度をマスター側自由度の線形結合で表す.
入力上は !EQUATION で各拘束式を定義する.!EQUATION で定義した多点拘束は,構造解析(静解析・動解析・固有値解析・周波数応答解析),および熱伝導解析(定常・非定常)で有効になる.構造解析では並進・回転自由度(自由度番号 1〜6)を,熱伝導解析では温度自由度(自由度番号 1)を対象に指定する.
多点拘束の選び方¶
多点拘束を入力する手段は,拘束対象を「個別の節点・自由度」「面と面」「節点と要素」のいずれとして与えるかで使い分ける.
| 機能 | 拘束対象の与え方 | 主な用途 |
|---|---|---|
!EQUATION |
個別の節点・自由度・係数を直接式として与える | 剛体結合,周期境界,スレーブ–マスター結合 |
!CONTACT INTERACTION=TIED(結合拘束) |
接触ペアで指定した面同士を結合する | 異なるメッシュ密度の部品を恒久的に結合する |
!EMBED |
埋め込み節点群を母要素群に結合する | 補強材を母材に埋め込む |
拘束関係を節点・自由度・係数として直接書ける場合は !EQUATION を用いる.対称境界・周期境界のように対面節点間の幾何関係が既知で線形関係として書ける場合に直接的である.面同士をメッシュ不整合のまま結合したい場合は結合拘束(INTERACTION=TIED)を,節点群を周囲の要素内部に拘束したい場合は埋め込みを用いる.結合拘束と埋め込みは,内部的に多点拘束として展開された上で !EQUATION と同じ経路で処理される.
すべり接触(INTERACTION=SSLID,FSLID)は,接触状態に応じて拘束関係が変化する非線形拘束であり,本章で扱う多点拘束には含まれない.すべり・離反を許容する接触については 接触・埋め込み を参照する.
拘束式の指定¶
拘束式は,!EQUATION で「項数 \(N\)」「右辺定数 \(c\)」と,項ごとの「節点 \(\mathrm{node}_i\)」「自由度番号 \(d_i\)」「係数 \(a_i\)」の組を与えて入力する.項の節点には節点番号または節点グループ名を指定する.項の自由度番号は,構造解析では並進 1〜3 と回転 4〜6 の範囲,熱伝導解析では温度 1 を用いる.モデル中で意味を持たない自由度(並進のみのソリッド要素に対する 4〜6 など)を指定した項は無視され,警告が出力される.
項に同一節点・同一自由度を重複して指定すると拘束式が縮退する.重複する 2 つ目以降の項は無視され,警告が出力される.1 本の拘束式の中では,異なる節点と自由度の組合せを指定する.
節点グループで複数節点を一度に指定する場合,グループ内の節点数は他の項のグループと整合させる必要がある.整合しない場合は入力エラーとなる.
拘束式の先頭項に指定した自由度は,処理上スレーブ自由度として扱われる.他の拘束式の先頭項や,!BOUNDARY による単点拘束,結合拘束の対象自由度と重ねてはならない.同一自由度を二重に拘束すると,拘束関係が冗長になり線形系が悪条件化する.
拘束式の書式・パラメータ・データ行の並びは !EQUATION を参照する.
拘束処理方式(数値解法側)¶
多点拘束を線形系へ反映する処理方式は,入力上の拘束式が同じでも係数行列の性質と収束性に影響する.FrontISTR ではペナルティ法と陽的自由度消去法を選択でき,反復法の既定は陽的自由度消去法,直接法の既定はペナルティ法である.処理方式の使い分けと指定方法は 線形ソルバ・前処理 の MPC 処理方式を参照する.