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解析種別

FrontISTRは,構造と熱の両方の物理を対象に,静的なつり合いから時間発展,周期定常,固有特性の抽出までを扱う複数の解析タイプを提供する.本ページでは各解析タイプが対象とする現象,適用範囲,使い分けを示す.入力ファイル上の書式はキーワードリファレンス,定式化の数学的詳細は理論マニュアルを参照のこと.

機能の全体像

FrontISTRの解析種別は,次の3つの軸の組合せで特徴づけられる.

  • 対象物理: 構造(変位・応力),熱(温度・熱流束),またはそれらの連成
  • 運動の扱い: 慣性項を含めるか,時間発展を追うか.これらは独立した軸である
    • 慣性を含めず,時間発展も追わない → 静的つり合い
    • 慣性を含めないが,時間発展を追う → 準静的(粘弾性・クリープ等)
    • 慣性を含め,時間発展を追う → 過渡動応答
    • 周期定常として周波数領域で扱う → 調和応答
    • 外力を与えず,系そのものの性質を抽出 → 固有特性
  • 線形性: 線形(微小変形・線形材料)か,非線形(大変形・非線形材料・接触)か

実装されているこれらの組合せが,以下の各解析タイプに対応する.入力上は !SOLUTION で解析種別の大分類を指定し,!DYNAMIC!EIGEN!HEAT などで付随する性質を詳細化する.時間発展を伴う解析における刻み幅や増分は !STEP で制御する.

解析タイプの選び方

解析タイプを選ぶ際には,扱う現象と求めたい結果を整理することから始まる.同じ対象物でも,何を知りたいかによって使うべき解析タイプは変わる.以下の観点を順に検討することで,目的に適した解析タイプに行き着く.

  1. 何を求めたいか — 変位・応力か,温度分布か,振動モードや周波数応答か.求めたい量が解析タイプの大枠を決める
  2. 慣性を考慮する必要があるか — 荷重の変化が速く,加速度が応答に影響する場合は動解析を選ぶ.ゆっくりとした変化で慣性が無視できる場合は静解析で足りる
  3. 時間発展を追う必要があるか — 慣性を無視できる場合でも,粘弾性やクリープのように時間に依存する材料応答を扱うときは,静解析の枠内で時間を刻みながら解く(準静的解析)
  4. 線形性の仮定が成り立つか — 微小変形かつ線形材料であれば線形解析で十分である.大変形・非線形材料・接触のいずれかを含む場合は非線形解析を選ぶ

典型的な問題と解析タイプの対応を次表に示す.

知りたいこと 解析タイプ
静荷重下の応力・変位 静解析(線形または非線形)
粘弾性・クリープを伴う時間応答 静解析(準静的)
衝撃・地震等の過渡応答 動解析
固有振動数・モード形状 固有値解析
調和加振に対する周波数特性 周波数応答解析
温度分布・熱流束 熱伝導解析
温度場による熱応力 熱応力連成解析

静解析

静解析は慣性項を無視してつり合い方程式を解く解析である.時間発展を扱わない定常的なつり合いだけでなく,粘弾性・クリープのように時間に依存する材料応答や,履歴のある非線形を扱う場合には,時間を刻みながら各時刻のつり合いを逐次的に追跡する準静的解析も,本枠組みに含まれる.動解析との違いは慣性項の有無にあり,時間発展の有無ではない.

線形静解析は,微小変形と線形材料を仮定し,つり合い方程式を一度の線形方程式求解で解く.計算コストが最も小さく,応力評価や設計初期段階の検討に用いられる.

非線形静解析は,大変形(幾何非線形),非線形材料(弾塑性・超弾性・粘弾性・クリープ),接触などのいずれかを含む場合に用いる.つり合い方程式が非線形となるため,荷重を複数の増分に分けて段階的に適用し,各増分内でNewton-Raphson法による反復求解を行う.粘弾性・クリープのように時間に依存する材料を扱う場合は,各時刻のつり合いを逐次的に追跡しながら同様の増分・反復を行う.

入力上は !SOLUTION, TYPE=STATIC を指定し,非線形性を扱う場合は NONLINEAR パラメータを付加する.時間刻みや増分制御,収束判定は !STEP で指定する.増分制御の詳細は ステップ制御 を参照のこと.

動解析

動解析は慣性項を含む運動方程式を時間発展として解き,外力の時間履歴に対する応答を時刻歴で得る解析である.衝撃荷重・地震応答・振動伝播のように,系の加速度が応答に大きく影響する現象を対象とする.

時間積分の方式は陰解法と陽解法に大別される.どちらを選ぶかは,扱う現象の時間スケール,問題規模,そして時間刻みの安定性要件によって決まる.低周波成分が支配的で比較的大きな時間刻みを取りたい場合は陰解法,衝撃・波動伝播のようにもともと小さな時間刻みが必要な高周波現象には陽解法が適する.

陰解法

陰解法(Newmark-β法)は,各時間ステップで連立方程式を解き,次時刻の変位・速度・加速度を求める.時間刻みに安定性の制約がなく,低周波成分が支配的な構造応答(地震応答・機械振動等)では大きな時間刻みを取ってステップ数を抑えられるため効率がよい.一方で各ステップごとに連立方程式求解コストが発生するため,非常に多くのステップを必要とする現象には不向きである.

陽解法

陽解法(中心差分法)は,前ステップの情報のみから次時刻の状態を直接算出する.連立方程式を解かないため1ステップあたりのコストは小さいが,時間刻みは系の最小固有周期に基づく条件(CFL条件)で制限される.衝撃・波動伝播・高速接触のように,もともと小さな時間刻みが必要な問題で有利となる.

入力上は !SOLUTION, TYPE=DYNAMIC を指定し,!DYNAMIC で解法の選択および Newmark-β 法などの積分パラメータを与える.複数ステップで境界条件・荷重グループを切り替える場合や,ステップごとの増分制御を指定する場合は !STEP を用いる.非線形動解析の陰解法では,収束状況に応じた自動増分・カットバックも利用できる.

固有値解析

固有値解析は,外力を与えずに質量行列と剛性行列による一般化固有値問題を解き,系そのものの固有振動数と固有モード形状を抽出する解析である.構造物の振動特性評価,共振点の把握,そして周波数応答解析でモード重ね合わせを用いる場合の前段として実行される.

解法としてLanczos法を採用し,指定した個数の低次モードを効率的に抽出する.質量行列は集中質量行列を用いる.

入力上は !SOLUTION, TYPE=EIGEN を指定し,!EIGEN で抽出モード数やシフト値等を与える.

周波数応答解析

周波数応答解析は,調和(正弦波)外力を加えた系が到達する周期定常応答を,加振周波数を変えながら求める解析である.時刻歴を追う動解析とは異なり,周波数領域で直接解くため,共振特性の評価や定常振動の設計に適する.

求解はモード重ね合わせ法を基本とし,事前に固有値解析で得た固有モードを重ね合わせて応答を構成する.したがって周波数応答解析の実行に先立って,同じ系で固有値解析を行っておく必要がある.対応するのは線形モデルのみであり,幾何非線形・材料非線形を有効にした場合は実行できない.

入力上は動解析の一形態として扱われ,!SOLUTION, TYPE=DYNAMIC を指定した上で,!DYNAMIC の下位パラメータで周波数応答であることを指定する.加振条件は !FLOAD で与える.

熱伝導解析

熱伝導解析は,熱伝導方程式を解いて温度分布および熱流束を求める解析である.構造解析と同じ有限要素メッシュを用いるが,節点自由度は温度の1つのみであり,扱う材料物性は熱伝導率・比熱・密度に限られる.境界条件も温度指定,熱流束,対流,輻射と,構造解析とは異なる種類が用意されている.

時間的性質による分類として,時間に依存しないつり合い状態を求める定常熱伝導と,温度場の時間発展を追う非定常熱伝導がある.どちらを選ぶかは,求めたいのが最終的に到達する平衡温度か,温度が時間とともにどう変化していくかで決まる.

入力上は !SOLUTION, TYPE=HEAT を指定し,!HEAT で定常・非定常の別および時間刻みを与える.

熱応力連成解析

熱応力連成解析は,熱伝導解析で得た温度分布を構造解析における熱ひずみ荷重として作用させ,温度場に起因する応力・変形を求める解析である.FrontISTRの標準的な運用は片方向連成で,熱解析と構造解析は独立に実行され,温度場は結果ファイル経由で一方向に受け渡される.

手順としては,まず熱伝導解析を実行して温度分布の結果ファイルを得る.次に構造解析を実行する際,!TEMPERATURE, READRESULT によってその温度場を温度荷重として読み込む.構造解析の枠組み自体は通常の静解析または動解析と同一であり,連成のための特別な解析種別を新たに指定する必要はない.

構造変形が熱伝導に影響を及ぼす双方向連成(変形による熱境界条件の変化等)については,本版のドキュメントでは対象外とする.

関連項目